マエストロ・ラトルに聞く~②バーンスタイン「不安の時代」

ロンドン交響楽団(LSO)を率いて9月に来日する、同楽団音楽監督のサー・サイモン・ラトル氏(以下R)に聞きました。

―バーンスタイン生誕100年にあたるツアーに「不安の時代」を選んだ理由を教えてください。

R:レナード・バーンスタインは言うまでもなく、20世紀の巨人のひとり。作曲家としても指揮者としても。私の父はジャズをやっていたし、自分もドラムをやっていたし、バーンスタインの作ったミュージカルやジャズ的な音楽は憧れでした。バーンスタインの音楽は大好きです。

彼のミュージカル「ワンダフルタウン」はベルリンでもジルベスターコンサートでやったし、ロンドンでも先日やりました。つくづく素晴らしい音楽です。

そして知っての通りバーンスタインには別の顔もあって―― いや、別ではないですね、同じ根っこから違う方向で表現をした、というべきか―― とてもシリアスな交響曲を3つ書きました。その1つが「交響曲第2番・不安の時代」。イギリスの詩人W.H.オーデンによる、第2次世界大戦中の人々の苦難や孤独を書いた詩を、6楽章の交響曲として音楽にしたものです。

ここにはオーデンの詩とともに、バーンスタインの愛と祈り、伝えていかなければいけないという強い思いがつまっていて、私もこの曲をぜひ彼の生誕100年というメモリアルイヤーにあちらこちらで演奏したいと思っていたのです。そしてこれはピアノ協奏曲的な音楽で、ピアニストがとても重要なのだけれど、実はクリスチャン(・ツィメルマン)は昔、バーンスタインがLSOでこの曲を指揮したときのソリストで―― 彼はバーンスタインにすごく信頼されていたからね。ウィーン・フィルとブラームスやベートーヴェンの協奏曲を全部録音しているし―― そのときからマエストロが、自分が100歳になったらまたぜひこの組み合わせで演奏しよう!なんて冗談を言っていたらしい。指揮者は自分になっちゃったけど、概ね実現しましたね。こうして最高のピアニストであるクリスチャンとのコンビで、今シーズンはベルリン・フィルともLSOとも、この「不安の時代」をツアーに持っていっています。

写真:サー・サイモン・ラトルとロンドン交響楽団 (C)Doug Peters

サー・サイモン・ラトル指揮 ロンドン交響楽団
2018年9月23日(日)14:00開演
フェスティバルホール

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