「ワーグナー特別演奏会」 バリトン、ミヒャエル・クプファー=ラデツキーさん来日! “マエストロ・飯守から、多くの音楽の糧を吸収したい”

ミヒャエル・クプファー=ラデツキー©Simon Pauly

1/23「ワーグナー特別演奏会」に出演するバリトンのミヒャエル・クプファー=ラデツキーが来日し、国内で自主隔離期間に入っています。コロナ下での活動など、近況について語ったメールのインタビューへの一問一答をご紹介します。
※インタビューは2020年9月に行ったものです。写真はSimon Pauly氏撮影


① 新型コロナウイルスの影響下、どのように過ごしていましたか。心境の変化や、音楽の力について得た新しい視点がありましたら教えてください。

コロナは全ての人々に大変厳しい状況をもたらしました! 私自身は幸いにもハノーヴァー・オペラ劇場との契約で、劇場のアンサンブルに所属していますので助かっています。当然のことながらキャンセルも出ています。例えばグラインドボーンの音楽祭、新作フィデリオなどで、残念に思います。
それでもこの時期をなんとか切り抜けました。ハノーヴァー・オペラ劇場ではいくつかのビデオ放映もしました。観客、オーケストラなしの全く初めての経験で、私にとっては大切なことでした。
昨年6月にはオープンエアーのコンサートをハノーヴァーで行いました。何週間ものブランクの後、舞台に立つことができ素晴らしかったです。特に観衆の感謝や大きな歓喜を感じることができたのは大きな喜びでした。

② 指揮者の飯守泰次郎氏について伺います。クプファー=ラデツキーさんは2018年に、 新国立劇場で 飯守氏が指揮したベートーヴェンのオペラ「フィデリオ」に、ドン・ピツァロ役で出演されました。彼の指揮や音楽性についてどのように感じていますか。

まず言えることですが、マエストロ飯守のような経験豊かな指揮者との共演は特別な意味があります。私はいつも出来るだけ多くの音楽の糧を、彼から吸収し、消化することに努力します。
彼の自然で無理がないなだらかな棒は印象的です。彼の音楽への知識は驚異的なもので、私を強く刺激してベストを尽くすところに持っていってくれます。ですから、また彼の指揮の元で歌うことが許されるのは私に取って大きな喜びと栄誉です。
そしてまた彼はワーグナーでは多くの新しい経験をもたらしてくれると思います。彼はワーグナー専門家ということで有名な方で、これもまたとても楽しみです。

③ 大阪で歌う曲目・役柄について(「タンホイザー」からヴォルフラムの「夕星の歌」、「ニーベルングの指環」第1夜「ワルキューレ」から「ヴォータンの別れと魔の炎の音楽」)。役への思いや、どのような人格・内容を表現したいかをお聞かせください。

この2つの曲目はもう30年以来歌っています! 学生の頃はヴォルフラムを一度でも良いから歌うということが大きな望みでした。ワルキューレのヴォータンについては、とても遠く望みの外でした。この役は絶対に歌える役ではないと思っていました。
ヴォルフラムについてはバイエルン州立オペラ、ミュンヘンのオペラ科で大歌手アステッド・ヴァルナイ先生のクラス(1995~97年)がありました。幸福にも彼女のもとでこの役を勉強できたのです。どのようにこの役に入って行くか、どのように自分が消化するか、彼女との集中した勉強は素晴らしい体験でした。
ヴォータンの「別れ」を初めて歌ったのは、自分で車を運転しながらイタリアへ長い旅をしたときのことです。その頃は、いつかはこの役が自分のものになるかと希望はしていました。2016年に夢が実現し、責任ある素晴らしい奇跡と喜びました。
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のザックス役と「ワルキューレ」のヴォータン役は、私のキャリアの鍵を握っていると思います。

ミヒャエル・クプファー=ラデツキー ©Opera Australia/ Jeff Busby


ミヒャエル・クプファー=ラデツキー Michael Kupfer-Radecky (Baritone)
ドイツ出身。2000年から定期的にチロル音楽祭に招かれ、「ニーベルングの指環」ヴォータン、グンター役で出演。2016年、「ワルキューレ」ヴォータンでハンガリー国立歌劇場にデビュー。「ニュルンベルクのマイスタージンガー」ハンス・ザックスをパリ・オペラ座、ミラノ・スカラ座で歌い、ベルリン・ドイツ・オペラでの「サロメ」ヨカナーン役でも大きな成功を収めた。2018年には新国立劇場でのカタリーナ・ワーグナー新演出「フィデリオ」に、ドン・ピツァロ役で登場、好評を博した。

※2018年新国立劇場「フィデリオ」出演時のインタビューは こちら から読めます。

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