「泥棒かささぎ」物語と音楽——日本ロッシーニ協会会長 水谷彰良さん寄稿

日本ロッシーニ協会会長・水谷彰良さんに、「泥棒かささぎ」の物語と音楽について寄稿いただきました。
場面と音楽の説明は、今回のプロダクションに合わせた構成になっています。

物語と音楽

序曲

冒頭の二つの小太鼓の連打が処刑を暗示し、壮麗な音楽とクレシェンドを採り入れたアレグロからなるシンフォニア。素材は代官のアリア、ニネッタとピッポの二重唱から採られている。

【第1幕】

第1曲 導入曲

ファブリツィオ家の中庭。召使たちが戦場から村に戻る同家の息子ジャンネットのために祝いの準備をし、かささぎにからかわれたピッポが笑い者になる。ルチーアとその夫ファブリツィオが「息子に嫁を探さねば」と話すと、かささぎが「ニネッタ」と鳴き、一同大喜びする。

レチタティーヴォ 小間使いのニネッタが以前銀のフォークを失したとルチーアが不満をもらすが、あの娘は父を兵隊にとられ、母を失くしてここで働いているのだから優しくしておやり、と夫に諭される。

第2ニネッタのカヴァティーナ 

イチゴを摘んできたニネッタが、恋人との再会に胸をときめかせて歌うアリア。父への思いも吐露しつつ、「今日ほど嬉しい日はないわ」と幸せに浸る。

レチタティーヴォ 息子との結婚に反対しないと話したファブリツィオは、優しくしすぎと妻に怒られる。

第3イザッコのカヴァティーナ 

小間物商イザッコ登場の短い歌。一つの音だけの冒頭13小節を鼻声で歌うよう指定されている。

レチタティーヴォ ピッポに嫌われたイザッコは、明日まで旅籠にいるとニネッタへの伝言を頼んで去る。

第4合唱とジャンネットのカヴァティーナ 

農民たちの歓呼に迎えられたジャンネットのアリア。ニネッタへの思いを吐露し、再会の喜びを華麗に歌い上げ、皆に祝福される。

第5ピッポの乾杯 

「杯を持って飲もう」とピッポが歌う乾杯の歌。木管楽器の舞曲を挟み、華やかに締め括る。

レチタティーヴォ 病気の伯父を心配するジャンネットが去り、ニネッタの前に父フェルナンドが現れる。

第6レチタティーヴォ、ニネッタとフェルナンドの二重唱 

フェルナンドは驚く娘に、軍隊で揉め事を起こして死刑を宣告され、脱走してきたと話す。続く二重唱は三つの部分からなり、4分の3拍子の中間部で父娘が心を通わせると人が来る気配がし、恐ろしい運命を嘆く切迫したカバレッタとなる。

第7代官のカヴァティーナ 

ニネッタを誘惑する計画を練った代官が自信満々で歌う登場のアリア。

─ レチタティーヴォ 代官が不審な男を見つけ、ニネッタはその場を取り繕うが、折悪しく脱走兵の手配書が届く。父から託された高価なスプーンを隠したニネッタは、眼鏡を持たぬ代官から手配書の代読を求められ、咄嗟に父と異なる名前と人相を読みあげる。

第8シェーナと三重唱 

ニネッタの言葉を信じた代官と、神に慈悲を請う父娘の三重唱。娘を口説く代官にフェルナンドの怒りが募り、対立が激化する(その間に、かささぎが部屋にあるスプーンを盗んで飛び去るのが見える)。

レチタティーヴォ ファブリツィオ家の1階の部屋。ニネッタはイザッコに父から預かったスプーンを売って口止めする。スプーンが1本足りないことにルチーアが気づき、代官は「盗みをした召使は死刑だ」と言って捜査を始める。

第9第1幕フィナーレ 

犯人探しの過程でニネッタが脱走兵の娘と判り、イザッコに売ったスプーンの代金を落として盗みの疑いをかけられる。イザッコの証言で疑念が強まり一同混乱すると兵士たちが現れ、代官がニネッタの投獄を命じる。「恐怖で身が凍る」と歌う全員のアンサンブルで閉じられる。

【第2幕】

レチタティーヴォ 牢獄の玄関の間。ニネッタは同情する看守アントーニオにピッポへの伝言を頼み、ジャンネットが面会に来る。

第10ニネッタとジャンネットの二重唱 

恋人から秘密を話すよう言われたニネッタが、「いつか潔白と分かってくれるでしょう」と言って死を覚悟する美しい二重唱。看守から代官が来ると告げられた二人は「愛しい人を返してください」と歌い、別れを告げる。

レチタティーヴォ 看守にニネッタを呼ぶよう命じた代官は、自由にしてあげられると言って懐柔する。

第11代官のアリア 

私に身を委ねれば助けると持ちかける代官のアリア。途中で審問の用意ができたと報告を受けると態度を一変させ、「拒絶すれば自業自得、情けは無用だ」と言い放つ。後半部に序曲のアレグロの音楽が聴き取れる。

レチタティーヴォ 絶望するニネッタはピッポと再会し、十字架と引き換えに栗の木にお金を隠すよう頼む。

第12レチタティーヴォ、ニネッタとピッポの二重唱 

十字架を受け取らないピッポにニネッタは「私の形見として持っていて」と言って渡し、二人は泣きながら別れる。哀愁に富む美しい旋律の前半部、序曲のアレグロ主題で感情が高まる中間部、歌詞と旋律を共有して心を通わせる終結部からなる。

レチタティーヴォ ファブリツィオ家の部屋。ルチーアはニネッタが無実かもしれないと考え始める。

第13曲 シェーナとフェルナンドのアリア 

フェルナンドが現われ、ルチーアからニネッタが盗みの疑いで裁判にかけられると教えられる。フェルナンドは愕然としながらも、命を賭して娘を助けようと決意する。

第14レチタティーヴォ、合唱と五重唱 

代官の屋敷の裁判の間。法廷でニネッタの有罪が宣言され、判事たちの厳粛な合唱が歌われる。裁判長が判決を読み上げ、斬首刑を言い渡す。傍聴人の驚きでアンサンブルとなり、ジャンネットは「彼女は秘密を隠している」と訴えるがニネッタは口を閉ざす。フェルナンドが飛び込んできて娘を救おうとするが、脱走兵として逮捕され、父娘は連行されてゆく(合唱付きのストレッタで閉じられる劇的なアンサンブル)。

レチタティーヴォ 村の広場。教会から出てきたルチーアは、天は不幸な娘を罰しないでしょうと願う。

第15ルチーアのアリア 

ニネッタを自分の娘として愛しますと歌う、優雅なカンタービレとアレグロからなる短いアリア。

レチタティーヴォ 栗の木にお金を隠して残金を数えるピッポに、アントーニオが判決を教える。かささぎがピッポのお金をくわえて鐘楼の方に飛び去るのを見た二人は、その後を追う。

第16第2幕フィナーレ 

葬送行進曲とともに刑場に向かうニネッタに農民たちが同情する。教会の前で祈ったニネッタが再び歩き始めると行進曲が高揚し、クライマックスを迎える。かささぎを追って鐘楼に来たピッポが鳥の隠した食器類を発見、鐘を叩いて村人を集め、盗みはかささぎの仕業とふれまわる。遠くに銃声を聞いたルチーアと代官はショックを受けるが、ニネッタ釈放の祝砲と分かる。大公により恩赦された父と再会したニネッタは無事を喜び、「恐怖が喜びと幸せに変わった」と一同安堵する(但し、代官だけはニネッタへの未練を捨てきれない)。

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