「お水取り、その光と影」。 さだまさしさんにとっての東大寺 修二会とは

さだまさしさん

5/13 特別公演「東大寺 修二会の声明」を前に、シンガー・ソングライターで小説家のさだまさしさんに、修二会について寄稿いただきました。

さださんは若いころから奈良のおおらかな空気に魅せられ、たびたび訪れてきたといいます。
東大寺では、1980年に行われた大仏殿昭和大修理の落慶記念行事などで、奉納演奏を行ってきました。お水取りを題材にした曲「修二会」(1993年)もあります。
そんなさださんにとっての「修二会」とは。


お水取り、その光と影

さだまさし


「お水取り」の名で呼ばれる東大寺十一面観音悔過法要(修二会)。
この行を二月堂内で拝聴すると、驚くことが沢山ある。
内陣は戸帳で覆われ、中でどのような行が行われているのかつぶさに伺うことは出来ない。
練行衆の走る音や堂内に響き渡る声明の美しさ、緩急の息づかいを、ひたすら手を合わせ息を呑んで拝聴するばかりだ。
たとえば戸帳が絞り上げられて走り出た僧の「五体投地」の、視覚的音響的効果。閑かな「お水取り」に続く「達陀(だったん)」の激しさに圧倒されながら気づく。
この「行」には「人に見せる」という重要な側面がある。
舞台に上がる者ならば解ること。見られているという緊張感は「心の弛緩」を許さないが、その分、達成したときの「カタルシス」は大きい。そんな側面もあろう。
光と影、見せるものと見せないもの。
ミステリアスで「行」に適った作法の数々。
そして1270年前から続くこの「行」には、舞台演出の全てが備わっていることに改めて感動する。


修二会で行われる「達陀(だったん)」。 1936年、奈良・東大寺/朝日新聞社提供


さだ まさし Masashi Sada

長崎市出身。シンガー・ソングライター、小説家。
’73年フォークデュオ・グレープとしてデビュー。
’76年ソロ・シンガーとして活動を開始。「関白宣言」「北の国から」など数々のヒット曲を生み出す。
ソロデビュー以来通算4500回を超えるコンサートのかたわら、小説家としても「解夏」「眉山」「風に立つライオン」などを発表。多くの作品が映画化、テレビドラマ化されている。またNHK「今夜も生でさだまさし」のパーソナリティとしても人気を博している。
2023年 6月からは「さだまさし50th Anniversary コンサートツアー2023~なつかしい未来~」の開催も決定している。

東大寺の大仏殿で歌唱するさだまさしさん(2019年)

top